新規上場(IPO)銘柄では、上場から一定期間が過ぎた「ロックアップ解除日」を境に株価が大きく動くことがあります。今回は、直近に東証グロース市場へ上場した銘柄を例に、ロックアップ解除前後で実際にどのような値動きが見られたのかを確認します。過去の事例を紹介するものであり、同じパターンが今後も繰り返されることを示唆・保証するものではない点にあらかじめご留意ください。
そもそも「ロックアップ」とは
ロックアップとは、新規上場時に主幹事証券と創業者・役員・ベンチャーキャピタル(VC)等の既存株主との間で結ばれる、上場後一定期間は保有株式を売却しないという取り決めです。取引所の規則ではなく当事者間の任意契約であるため強制力は限定的ですが、上場直後の需給悪化を防ぐ目的で広く用いられています。期間は90日または180日とされることが多く、VC株主については「90日ロックアップかつ公開価格の1.5倍以上の株価になった場合は期間内でも解除される」といった価格条項が付くケースもあります。
なぜ株価に影響しうると言われるのか
ロックアップが解除されると、それまで売却できなかった大株主やVCが株式を市場で売却できるようになります。一般には、この供給増加によって需給バランスが崩れ、株価の下落要因になりやすいと説明されます。もっとも、これはあくまで需給面から見た一般的な考え方であり、実際に下落するかどうかは、解除される株数の規模、保有株主の売却意向、その時点の業績・市況など複数の要因によって左右されます。
以下では、2025年10月〜12月に東証グロース市場へ上場し、既にロックアップ期間が満了した銘柄の中から、株価データを確認できた3社を取り上げます。値動きが大きかった銘柄や好都合な結果の銘柄を選んで取り上げたものではなく、確認できた事例をそのまま紹介しています。
大きく下落した例:パワーエックス(485A)
蓄電池製造のパワーエックス(485A)は、2025年12月19日に東証グロース市場へ上場し、180日ロックアップが2026年6月16日に満了しました。翌6月17日、同社株はストップ安となる2,291円(前日比▲500円、▲17.91%)まで急落し、日本経済新聞・株探等の報道でも「ロックアップ解除に伴う需給懸念」が下落の見方として伝えられました。
なお、この下落がロックアップ解除のみを原因とするものと断定できるわけではなく、当日の市況全体の動きなど他の要因も影響した可能性がある点にはご留意ください。
急落が確認されなかった例(日次データ未確認)
ここで紹介する2社については、解除日当日・翌日といった短期の日次の値動きを裏付ける一次情報は確認できていません。パワーエックスの事例のような確度の高いデータではなく、年間の高安や直近の株価水準といった確認できた範囲の事実にとどめてご紹介します。
- ユーソナー(431A):企業データベース事業を展開し、2025年10月17日上場(公開価格2,000円、初値2,350円)。90日ロックアップは2026年1月14日、180日ロックアップは2026年4月14日に満了しました。2026年8月時点の株価は2,175円と初値近辺の水準を維持しており、業績も増収増益基調で推移しています。
- ムービン・ストラテジック・キャリア(421A):コンサルティング人材紹介事業を展開し、2025年10月6日上場。180日ロックアップは2026年4月3日に満了しました。解除を挟んだ期間を通じて、急落と呼べるような大きな下落は確認されていません。
以上より、両銘柄とも「解除後も急落は確認されなかった」という以上に踏み込んだ評価は控えます。
事例から見えること・注意点
今回確認できた範囲では、ロックアップ解除を境に大きく下落した銘柄もあれば、そうでない銘柄もありました。「解除されると必ず下がる」という単純な図式で語れるものではなく、解除される株数の規模や、その時点での業績・市場全体の地合いなど、個別の事情によって結果は大きく異なります。過去の事例はあくまで結果論としての参考情報であり、将来の同種のイベントで同じ値動きが再現されることを示唆・保証するものではありません。
まとめ
ロックアップ解除は、需給面から株価に影響を与えうるイベントとして知られていますが、実際の値動きは銘柄ごとに大きく異なります。IPO銘柄に投資する際は、公開時のロックアップ期間・解除条件を確認しておくとともに、解除前後の値動きだけに注目するのではなく、業績や事業の状況もあわせて確認することが大切です。



























