
全世界株式(
オール・カントリー)略称:オルカン
積立NISAで圧倒的人気を誇る「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(略称:オルカン)。2025年7月現在、基準価額が28,617円と過去最高値を更新し、SNSや投資系メディアでも祝福ムードが広がっています。しかし、その「絶好調」に安易に乗る前に、今一度足元のリスク――特に「本質的に円建て評価の外貨資産」である点と、今後想定される「円高トレンド」のリスク――を見つめ直しましょう。
目次
- オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)とは何か?
- なぜ今、基準価格が最高値を更新しているのか
- オルカンのリターンとドル円相場の深い関係
- 円高転換の“逆風”リスク――長期で待ち受ける現実
- 今こそ鳴らす警鐘!やってはいけない投資行動例と対策
- まとめ――「長期投資」でも放置は危険、その理由
オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)とは何か?
オルカンは、先進国から新興国まで「全世界」の株式市場に分散投資できる投資信託です。
インデックス型で、米国株式が約6割以上と最大の割合を占め、次いで日本・英国・フランスなど複数の国に投資しています。基準価額は2025年7月に28,617円と史上最高値を更新し、純資産総額は6兆7,000億円規模に拡大中です。
- 低コスト(信託報酬が業界最安水準)
- 無分配型・複利重視
- 為替ヘッジなし(=外貨リスクあり)
- 積立NISA対象で長期資産形成に人気
なぜ今、基準価格が最高値を更新しているのか
本年に入り「オルカン」の基準価額が記録的な上昇を続けてきた理由は、主に以下の複合効果です。
- 世界の株式市場(米国を中心)の上昇
- ドル円相場を中心とした大幅な円安進行
- 日本人投資家の資金流入増加
実質的にここ約1年のリターン増の大半は、「円安の恩恵」が大きかったといえます。
たとえば2024年1月から2025年7月のオルカンの上昇率は+28%超ですが、同期間のドルベースの株価上昇は12%程度と、為替(円安)分が2倍ほどの“ブースト要因“となっています。
オルカンのリターンとドル円相場の深い関係
オルカンはベンチマークであるMSCI ACWI(配当込み・円換算ベース)と連動するファンド構造のため、円建てで評価されます。そのため為替(ドル円)相場の変動が基準価額に約9割の影響を与えるという特徴があります。
- 円安時:外貨資産(米ドルなど)の価値が円換算で膨らみ、基準価額が上昇
- 円高時:逆に円換算価値が下がり、基準価額も下落しやすくなる
株高でも円高進行時はオルカンの基準価格が下がる可能性がある一方、株安でも極端な円安では基準価格が下支えされるという現象も現れます。
例:2020年コロナショック期では、世界株価と円安進行が同時に起こり、両方の影響がオルカンの価格を大きく動かしたことも過去に観測されています。
円高転換の“逆風”リスク――長期で待ち受ける現実
2025年夏現在、足元では「歴史的円安」と言われる水準まで進行し、1ドル=140円台半ば~150円台を記録する場面も多くなっています。しかし、日米の金利差縮小や日本の利上げ・米国利下げ観測などから2025年末〜2026年にかけては「円高」方向への転換・円安トレンド一服が警戒されているのが現状です。
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メガトレンドとしての「円高」シナリオ
- 日本の賃上げ・利上げが次々と実施
- 米国利下げ(景気減速・政策転換の兆候)
- 日米金利差の急速な縮小
- 歴史的な円安水準の是正圧力(為替介入含む)
各社の見通しでも、2025年末に「1ドル=140円台前半」を予想する声が有力で、それより円高が進むシナリオも十分考えられます。この場合、例え世界株高が続いてもオルカンのリターンが大幅に削がれる、もしくはマイナス圏に転落するリスクは非常に高くなるのです。
シナリオ | 株価動向 | ドル円 | オルカン基準価額 |
---|---|---|---|
A:株高&円安 | +10% | +10% | +約20% |
B:株高&円高 | +10% | -10% | ±0~▲数% |
C:株安&円高 | -10% | -10% | ▲約20% |
D:株安&円安 | -10% | +10% | ±0~▲数% |
つまり「株価」だけでなく「為替相場=円高・円安」の動向も、オルカンの評価額を直撃します。
今こそ鳴らす警鐘!やってはいけない投資行動例と対策
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基準価格の上昇=絶対の安心と誤信し、現状維持・追加投資を繰り返すこと
- 今後「円高」が進めば急激な基準価額の調整も十分に起こり得るため、あくまでリスクを認識して積立を。
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「ほったらかし=万能」思考に陥ること
- 本当の長期投資を目指すなら「経済・為替環境の変化」を定期的にチェックし、出口戦略や戦略変更も視野に。
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全資産をオルカン1本に集中させること
- 円建て資産・他のリスク資産・現預金等とのバランスも考えた資産設計を。
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為替ヘッジの仕組みやリスクを学ばず、「円高が来ても大丈夫」と思い込むこと
- オルカンは原則として為替ヘッジなし商品。円高進行時にはどうしても下落圧力を受ける宿命です。
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「ドル円はもう円安しかあり得ない」と決めつけること
- 金融政策や世界経済のサイクルは必ず変わる。円安期の後には必ず円高修正局面がやって来るのが歴史的にも事実です。
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急激な相場変動時に感情的に売買すること
- 一時的な為替や株価の上下で「狼狽売り・高値掴み」にならないよう、冷静な判断を。
まとめ――「長期投資」でも放置は危険、その理由
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は王道かつ有力な長期積立戦略ですが、その値動きの核心は「世界株価<為替レート>」のダブルインパクトが必ず効いてくる商品です。
過去の円安ブームに盲目的に安心せず、「これから」は円高修正リスクが待っているという現実的な警鐘を今こそ受け止めてください。
- 日米金融政策サイクル・金利差・世界情勢が大きく変わるたび、資産評価額も大きく変動します。
- 「放置」ではなく「定期点検」――・相場環境や自分の投資状況に応じて柔軟に戦略を見直すことが、長期で生き残る真の投資家の条件です。
“基準価額最高値”の歓喜ムードこそ要注意。その裏にある「円高リスクとオルカンの本質に迫る資産運用」の知識と冷静さを、あなたの長期投資に活かしてください。