名村造船所(
7014):利益急減予想でも再浮上の兆し?海運と為替に翻弄される「造船復権物語」
目次
1. 基本指標・株価バリュエーション
| 項目 | 数値(2025年10月24日時点) | 特徴 |
|---|---|---|
| 株価 | 4,585円 | 年初来高値圏(前期比約+150%) |
| PER | 17~21倍 | 業界平均よりやや高め |
| PBR | 2.4~2.9倍 | 利益成長を織り込んだ水準 |
| 配当利回り | 0.9%(40円/株予定) | インカムとしては物足りない |
| 自己資本比率 | 50%前後 | 重工業としては堅実な財務構造 |
株価は円安期待・防衛関連テーマ・受注増を背景に年初から継続上昇していますが、PER20倍台と「鉄鋼・造船セクター」としてはかなり高水準。短期的には過熱懸念もあり慎重さが求められます。
2. 業績動向と成長力
- 2025年3月期実績:売上高1,592億円(+17.9%)
- 経常利益295億円(+47.5%)、最終利益262億円(+31.5%)と好調
- しかし2026年3月期予想:売上1,580億円(-0.8%)、経常利益210億円(-28.8%)、純利益150億円(-42.8%)
- 急減益見通しの背景:鉄鋼・資材・人件費高騰、円高リスク、建造コスト上昇
- 手持ち受注残は前期比17%増で将来収益には一定の明るさ
成長トレンドは23年以降のV字反転を果たしたものの、今期は一服感。受注案件が積み上がる一方で、国際市況・コスト増が足かせとなり収益性改善が一時停滞する可能性があります。
3. 直近決算(2025年3月期)の評価
- 営業利益率18.5%→利益率は業界平均を上回る好水準
- 新造船受注の採算改善が大きく寄与、燃費効率・LNG船需要追い風
- 1Q 2026では円高・材料費上昇で減益(経常利益59億円、進捗率28.1%)
- 通期見通しでは減配も含め慎重姿勢
第1四半期で経常利益進捗28%は可もなく不可もなし。受注堅調だが、利益率悪化・コスト負担を見越しやや弱含みのスタート。
4. 財務健全性と課題
- 自己資本比率約50%で健全、資産構成も重工業標準
- 有利子負債比率は情報非開示部分多いが、コスト負担増は懸念
- 営業キャッシュフロー堅調だが設備維持費・更新費が嵩む構造
- 為替予約・金利ヘッジ体制ありだが、急激な円高は直撃リスク
資本体力はまずまず堅いが、為替や建造コストの波に弱いビジネスモデルが続くため、リスク対応力の強化が中期課題。
5. 為替リスクと受注構造
- 新造船の輸出比率が高く、受注の大半は米ドル建て
- 為替予約を計画的に実施してリスク管理
- 円高局面では採算急悪化・損益圧迫リスク
- 見積精度の向上・設計最適化を進め、為替変動やコスト上振れを吸収する方針
為替の影響が最も直撃するセクターの一つ。円安局面では株価上昇と収益拡大が連動するため、為替局面の見極めが極めて重要です。
6. 景気サイクル・造船業界の位置づけ
- 造船は典型的な景気循環セクター。景気拡大・資源輸送・船舶需要がカギ
- 2025年は世界的な輸送需要回復・環境対応船需要が支え
- ただし、造船余力の増加・人員コスト上昇が中期リスク
- 国内造船業の再生支援・政府補助金政策も後押しあり
現在の造船業は“回復期の余熱フェーズ”。ただし、建造コスト抑制と人員確保が課題として浮上しています。
7. 投資判断:好材料と懸念点
ポジティブ材料
- 売上・利益ともに高水準を維持
- 受注残高17%増、世界のLNG・バルク需要回復シナリオ
- 政府補助・防衛関連注目による製造インフラ強化
リスク要因
- 2026年3月期減益(営業・経常・純利益いずれも▲30~40%)予想
- 配当減・資材調達コスト上昇・円高が業績圧迫
- 景気敏感で変動大きく、安定配当・長期保有向きではない
8. 配当・株主優待・還元方針
- 2025年配当50円→2026年予想40円(減配予定)
- 配当利回り約1.0%、配当性向13.2%と保守的
- 株主優待なし
増配期を経て再び減配路線へ。内部留保重視姿勢のため、成長への再投資中心。
9. マクロ・為替・国際需給の影響
- 円安:受注・採算にプラス
- 円高:コスト負担・受注競争激化にマイナス
- 鉄鋼・燃料価格:変動で利益圧迫リスク
- 防衛・環境政策:補助金・技術革新支援への追い風
10. キャッシュフローと投資余力
- 営業CFの改善により設備投資・研究費が拡大可能
- フリーキャッシュフローは黒字だが余裕は限定的
- 設備・人材更新への出費が避けられず、中長期の株主還元より生産力拡大へ再配分
11. 投資スタイルとの適合性
- 短期・中期の景気連動トレード向け
- 長期の配当・優待目当てには不向き
- 大幅押し目買いまたは景気回復相場での順張りが有効
12. 買い時判断と戦略
- 暴落・円高・新造船受注停滞局面での割安買いが王道
- 円安持続とLNG船・防衛需要拡大の局面で強気転換
- 現状はPER高、水準感から「様子見・押し目待ち」
13. 総合評価と展望
- 短期投資家評価:★★☆☆☆/トレンド・材料プレイ向き
- 長期投資家評価:★☆☆☆☆/配当・優待・安定志向には不向き
- 中期テーマ:防衛・環境関連補助金が継続で復調にチャンス
14. 造船業界の潮流と名村造船の立ち位置
- 2025年~2030年は「CO2削減」「LNG燃料」「次世代エンジン」が成長軸
- 日本造船業は中国・韓国に水をあけられてきたが、近年は高付加価値路線で巻き返し中
- 名村造船の強み:長崎・伊万里拠点で中型船・特殊船に強く、技術面で国際競争力復活
- 人件費上昇・技能継承課題も国策後押しで改善の兆し
15. 総括と投資家の視点
名村造船所は短期的に減益・減配懸念を抱えながらも、世界的な環境対応船ニーズ・政策支援によって中期的な回復余地を保持。2025年後半は利益調整期とみられるが、財務安定性・受注残高を背景に再浮上局面も想定される。
優待・高配当狙いでは魅力薄く、むしろ「海運需要×円安相場」を見越した景気連動投資として位置づけたい。リスク管理を前提に、中長期の業界復調に合わせて波乗りする柔軟戦略が有効です。
※本レポートは2025年10月時点の公開決算資料・IR・業界分析・株式市場動向を基に独自編集しています。投資判断は自己責任により行ってください。











(NVDA):AI革命の波に乗る半導体覇者の光と影を辛口で読み解く](https://stock.trgy.co.jp/wp-content/uploads/2025/07/blue-village-4717743_640.jpg)


:成長期待とリスクの狭間で揺れる半導体王者](https://stock.trgy.co.jp/wp-content/uploads/2025/07/landscape-5384121_640.jpg)
















