レゾナックHD(
4004)──半導体材料革新と収益構造転換の正念場、次世代素材戦略を読む
目次
1. 基本指標・株価の現状
| 項目 | データ(2025年10月時点) | ポイント |
|---|---|---|
| 株価 | 5,794円 | 年初来高値圏を維持(前月比+8%) |
| PER | 約39.8倍 | 半導体材料関連のプレミアム評価 |
| PBR | 1.62倍 | 資本価値の約1.6倍で取引 |
| 配当利回り | 1.14%(65円/株) | 還元より成長投資重視 |
| 自己資本比率 | 30.6% | 有利子負債が比較的多め |
2025年秋時点で株価は5,800円台。電子材料事業が牽引する一方、黒鉛電極市況の低迷や原材料高の重しもあり、割高感と再評価のはざまにある銘柄です。
2. 事業概要とポートフォリオ転換
レゾナックは昭和電工と日立化成の経営統合によって誕生した総合素材メーカーです。事業構成は「半導体・電子材料」「黒鉛電極」「機能性化学」「樹脂・石油化学」など。
- 旧日立化成が担ってきた半導体・電子材料技術が現在の成長の柱
- 旧昭和電工由来の基礎化学・黒鉛電極分野は収益変動大
- 現在は“化学からテクノロジー材料企業”への転換戦略を加速中
黒鉛電極(製鉄向け)依存を脱し、AI需要を追い風とした電子材料目的への展開を急速に進めています。
3. 業績推移と決算動向
- 2024年実績:売上1兆3,914億円(+7.4%)/経常益846億円(+695%)
- 2025年通期予想:売上1兆4,220億円(+2.2%)/経常利益380億円(−55%)
- 1〜6月期累計:経常利益304億円(通期進捗率80%)
- 2025年Q2:黒鉛電極の販売数量と価格下落が直撃し、セグメント赤字拡大
半導体分野はAI・サーバー用途で増益、しかし黒鉛電極の市況悪化で全体では減益。次期テーマは「選択と集中」の実効性です。
4. 財務健全性と資金構成
- 総資産:1兆7,200億円規模、負債総額1兆2,000億円
- 短期借入金・社債依存高め、金利負担あり
- 自己資本比率30%と素材業界平均より低め
- 設備負担が継続し、CF圧迫の懸念も
財務面の不安は残るものの、統合効果により資産構成は整理中。AI対応の新工場投資(150億円)を実施しており、長期的な改善フェーズにあります。
5. 半導体・AI材料開発の進展
- AIサーバー需要に対応し電子材料生産能力を拡張中(投資150億円)
- 次世代SiCエピタキシャルウェハーや高性能封止材(パッケージ)を強化
- 「JOINT」コンソーシアムを主導し、後工程パッケージング技術で主導権
- 半導体材料セグメント:前年比+21%の二桁増収
AIシフトが形を変える半導体投資で追い風を享受していますが、顧客の投資一巡や市況調整への慎重姿勢が課題です。
6. 黒鉛電極市況と景気感応度
旧昭和電工系の黒鉛電極事業は、鉄鋼需要の鈍化で市況が低迷。
- 販売数量・価格ともに前年割れ
- 低価法戻り益が前期比で剥落→赤字拡大
- ロシア・中国勢との価格競争も激化
市況回復は2026年以降と予測され、短期調整局面が続くと思われます。景気敏感度が高く、世界鉄鋼需給次第で利益が大きく変動します。
7. 配当・株主還元方針
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年間配当予想 | 65円(利回り1.14%) |
| 配当性向 | 15.9% |
| 方針 | 「事業成長と内部留保を両立する安定配当」 |
配当は維持的であり、成長投資を優先する姿勢。株主優待は設けていません。
8. マクロ要因と外部環境
- 円安:輸出競争力の向上でプラス
- 資源価格:ナフサ・エネルギー価格の上昇でコスト増
- 中国・米国の景気鈍化が電子材料需要を変動させる
- AI需要・半導体投資再開のストーリーが中期追風
現状のマクロ環境は「外部リスクと内需成長が拮抗」。為替が115〜145円レンジにおさまることが業績安定の鍵です。
9. 投資判断(強み/リスク)
ポジティブ材料
- 半導体パッケージ・材料事業の成長性(次世代メモリ、高周波材)
- SI・AI分野向けの技術領域拡張(JOINT参画)
- アナリスト評価:目標株価5,900円(最新IFIS)
リスク・懸念点
- 黒鉛電極事業の赤字が全体収益を圧迫
- 自己資本比率30%と財務リスク
- 半導体サイクル調整に伴う減益リスク(経常−55%予想)
10. 投資スタイルと戦略的エントリー
- 短期トレーダー:化学・AIテーマ回転で需給狙いはあり
- 中長期投資家:半導体材料の成長ポテンシャル重視で押し目買い戦略
- 買いレンジ目安:4,700〜5,000円
- 保守層:配当・優待魅力薄のため分散投資枠としての保有が適
11. 総合評価・投資価値分析
- 短期評価:★★☆☆☆(黒鉛電極の不透明感)
- 中期評価:★★★☆☆(電子材料の回復待ち)
- 長期評価:★★★★☆(AI・半導体の大型成長シナリオ)
統合後のレゾナックは「過渡期の素材株」。旧昭和電工と日立化成の融合効果を完全に発揮するにはもう1〜2年必要です。
12. 今後の戦略・半導体事業の展望
- 「高シェア製品の延命」と「次世代材料開発」を両輪に事業拡大
- JOINT構想によるパッケージ技術開発で後工程市場を獲得
- 顧客層(TSMC・Intel系など)との協業加速
- 2030年には半導体事業の営業利益比率40%超を目指す
AI・EV・データセンターの巨額需要に応え、半導体後工程でのポジション獲得を狙います。短期業績は辛いが、技術突破力は業界内で高く評価されています。
13. 投資家へのメッセージ
レゾナックは昭和電工と日立化成という異分野企業の融合体です。黒鉛電極不振という短期的苦難の裏で、半導体・AI材料という長期成長軸に資本を集中しています。
中期的に財務改善と利益体質の両立が見えてくれば、株価6,000円超の回復も十分に射程圏内。現状では「半導体材料テーマの押し目候補」としての監視価値が高い銘柄と言えます。
※本レポートは2025年10月時点の決算資料・IR情報・業界動向・アナリスト分析をもとに独自構成。情報は公表値に基づく推定を含みます。投資判断は自己責任でお願いします。












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