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【9509 北海道電力】PER4倍・PBR0.5倍台でも“罠”じゃない?原発再稼働期待と燃料価格の波をどう乗りこなすか



【9509 北海道電力】“PER4倍の激安ディフェンシブ株”?原発・燃料費・高金利時代を乗り切れるか本気レビュー

1. 北海道電力はどんな銘柄か

北海道電力(9509)は、その名の通り北海道エリアを担当する電力事業者で、発電・送配電・小売までを手掛けるインフラ企業です。 北電・HEPCOと呼ばれることも多く、泊原発を保有していることでも知られています。

投資テーマとしては、「公益・インフラ」「ディフェンシブ高収益期」「原発再稼働期待」あたりがキーワードになります。株価指標的にはPER4倍前後・PBR0.5倍台と、一見かなり割安に見える水準にあり、配当利回りも約3%前後とそこそこ魅力的です。

2. 基本指標と株価水準(2026年2月時点)

2-1. 株価とバリュエーションの概観

2026年2月9日前後の株価水準とバリュエーションは、概ね以下のようなイメージです。

指標 水準(目安) コメント
株価 約1,010〜1,115円 直近1週間は1,000〜1,120円レンジで推移 チャート
時価総額 約2,000〜2,300億円 地方電力としては中型クラス
PER(予想) 約3.8〜4.0倍 利益水準を考えると明確に割安圏
PBR(実績) 約0.5倍台 解散価値の半分レベルで評価されている
配当利回り(予想) 約2.7〜3.0% 年間30円(中間15円+期末15円)予想
自己資本比率 約17.5% 設備産業としては標準〜やや低め

PER3.8倍・PBR0.5倍台という数字だけを見ると、「超割安インフラ株」に見えますが、その裏側には「足元の利益水準が異常に高い(=持続性に疑問)」という前提があります。 ここをどう評価するかが、この銘柄の投資判断の肝になります。

2-2. 株価レンジとボラティリティ

2026年1月〜2月上旬の株価をみると、1,000〜1,180円程度の範囲で激しめに動いており、出来高も1日数百万株〜700万株超とそれなりの流動性があります。 電力株は一見ディフェンシブに見えますが、燃料価格や原発関連ニュースに反応して短期的にボラティリティが高まることも多い点には注意が必要です。

3. 直近決算と業績トレンド

3-1. 2025年3月期決算の概要

2025年3月期(24年度)の決算では、売上高約9,020億円(前年から減収)、純利益約640億円と、過去最高水準に近い利益を計上しました。 1株益(EPS)はざっくり300円台前半、配当は20円から30円へと増配しています。

増益の主因は、2024年3月期に続く燃料価格の低下や卸電力市場価格の落ち着きで、火力発電の燃料費調整がプラスに働いたこと、加えて託送料金や販売単価調整などで採算が改善したためとされています。

3-2. 2026年3月期(今期)の進捗

2026年3月期の第2四半期決算短信などによれば、2025年度3Q時点の売上高は6,464億円(前年同期比▲5.7%)、経常利益568億円(同▲23.0%)と減収減益となっていますが、核燃料売却益の計上などにより純利益は546億円(同+1.9%)と増益でした。

通期予想では、2025年3月期ほどの利益水準からは一段落ちるものの、依然として高水準の黒字を見込んでおり、それを背景に年間配当30円(前期20円からの増配)を計画しています。

3-3. 利益の「平常時水準」をどう見るか

2024〜2025年度にかけての好業績は、燃料価格の落ち着きや電力市場環境の改善に支えられた「追い風」の側面が強く、長期的に同じ水準の利益が続くとみなすのは危険です。

一方で、泊原発再稼働に向けた準備や、再エネ・卸電力市場を組み合わせた調達最適化が進めば、「過去の赤字水準には戻りにくい」構造を作れる可能性もあり、どこを「平常時の利益」と見るかで、PER評価は大きく変わってきます。

4. 収益構造と成長性:何で稼いでいるのか

4-1. 売上構成

北海道電力の売上の大半は、北海道内の電気料金収入です。 小売全面自由化後は、新電力との競争もありますが、北海道という地理的・気候的特殊性(寒冷地・広大なエリア)から、依然として基幹インフラとしての役割が強く、一定の顧客基盤を維持しています。

送配電部門については、法的分離・規制収入部分もあり、完全な自由競争とは異なる枠組みで安定収益を確保している点も、インフラ株としてのディフェンシブ性につながっています。

4-2. 成長性は限定的だが、「回復局面」にある

長期的な売上成長率は、ほぼ横ばい〜微減と見てよく、「高成長セクター」とは言えません。 北海道の人口減少・省エネの進展などを踏まえると、電力量(kWhベース)の伸びも大きくは期待しにくい状況です。

ただし、ここ数年は「赤字→黒字→高水準黒字」と、収益のV字回復フェーズにあり、「成長株ではないが、構造改革と燃料環境の改善で利益が戻ってきた局面」と整理するのが適切です。

5. 財務健全性と負債の重さ

5-1. 自己資本比率とレバレッジ

マネックス証券などの指標によると、北海道電力の自己資本比率は17.5%程度とされています。 これは一般事業会社と比べると低めですが、電力会社のような設備産業としては「標準〜やや低め」といった水準です。

総資産に占める有利子負債の割合は高く、長期債務・社債・借入金などに依存する構造で、金利上昇局面では利払い負担がじわじわ効いてきます。 その分、営業キャッシュフローの安定性と規制収入の存在が、債権者からの信頼を支える材料になっています。

5-2. キャッシュと設備投資

流動資産(現金・預金・売掛金など)は1,500億円規模を維持しており、短期的な資金繰りに問題が生じる状況ではありません。 しかし、電力会社特有の大規模設備投資(発電所・送配電網・老朽設備の更新など)が継続的に必要であり、フリーキャッシュフロー(FCF)は「安定はしているが潤沢とまでは言えない」レベルと考えられます。

特に、泊原発再稼働に向けた安全対策投資・調査費用などは、今後数年にわたって重石になる可能性があり、「FCFの一部は将来の再稼働準備に吸い込まれる」前提で見る必要があります。

6. 為替・燃料価格・金利:マクロ環境の影響

6-1. 為替と燃料価格のダブルインパクト

北海道電力は、主にLNG・石炭などの化石燃料を輸入に依存しており、為替(円安・円高)と国際燃料価格の影響を強く受けます。 円安+燃料高は、調達コストを押し上げ、料金転嫁までのタイムラグも存在するため、短期的な利益圧迫要因になります。

2024〜2025年度の利益改善は、燃料価格の落ち着きや卸電力市場価格の低下に支えられた面が大きく、今後再び資源価格が高騰すれば、逆方向の圧力が強まるリスクもあります。

6-2. 金利上昇と負債コスト

日銀の金融政策転換に伴う金利上昇は、長期債務を抱える電力会社にとってはじわじわとボディーブローになります。既存債務の金利は固定である部分も多いものの、新規起債や借換時の調達コストは確実に上昇していきます。

自己資本比率が20%を切る水準での高レバレッジ構造を考えると、「高金利が長期化するシナリオ」は、北海道電力にとって中長期のリスク要因と言えます。

7. 配当と株主還元方針

7-1. 配当実績と今期予想

みんかぶ等によれば、北海道電力は2024年度に1株当たり20円の配当を実施し、2025年度(2026年3月期)の年間配当予想は30円(中間15円+期末15円)とされています。

この水準を前提とすると、株価1,010〜1,115円レンジでの配当利回りは概ね2.7〜3.0%となり、ディフェンシブ株として「そこそこ悪くない」利回りです。

7-2. 配当性向と持続可能性

みんかぶのデータでは、直近の配当性向は6.53%程度とされており、足元の利益水準から見ると「かなり余裕のある配当」と言えます。 これは、燃料価格低下などにより一時的に利益が膨らでいるためで、「この利益水準が平常時」とは限らない点に注意が必要です。

同社は「安定した配当を基本方針とし、財務健全性と事業基盤の強化を両立」としており、無理な高配当には踏み込まず、状況を見ながらじわじわ配当水準を調整するスタンスです。 大幅な減配リスクは低いものの、燃料環境悪化や原発再稼働の遅れが長引けば、再度配当見直しの可能性はゼロではありません。

8. バリュエーション:PER3.8倍・PBR0.5倍台の読み解き方

8-1. なぜこんなに安く見えるのか

PER3.8〜4.0倍という水準は、日本株全体(PER14〜16倍程度)と比べて明らかに割安で、同業の大手電力会社と比べても低い部類に入ります。 しかし、これは「利益が一時的に膨らんでいる」「市場がその持続性を疑っている」という前提があるからこその数字です。

PBR0.5倍台についても、「純資産の半値で放置されている」状況であり、市場は北海道電力の将来の収益力・資産価値に慎重な見方をしていると言えます。

8-2. 「正常利益」ベースで見た場合のPER

仮に、2025年3月期や2026年3月期の高水準利益ではなく、燃料環境が中立〜やや逆風に戻った際の「正常ベース純利益」を400〜500億円程度と仮定すると、EPSは200円前後、現在株価に対するPERは5〜6倍程度になります。

それでもなお割安ではありますが、「超絶バーゲン」とまでは言えず、「成長がほとんどないインフラ株に、ディスカウントを付けた水準」としてある程度納得できるレンジになります。このあたりの「どの利益水準を前提にするか」が、投資家によって見解が分かれるポイントです。

9. 主なリスク:原発・需要・規制リスク

9-1. 泊原発再稼働リスクとオプション価値

北海道電力にとって最大級のテーマが「泊原子力発電所の再稼働」です。 再稼働が実現すれば、燃料費の構造的な低減・CO2排出削減・電源構成の安定化が見込める一方で、安全対策投資・規制対応コスト・事故リスクなど、多面的な論点があります。

現時点では、再稼働の時期・条件について不透明性が高く、市場は「ポジティブなオプションはあるが、すぐには織り込まない」姿勢を取っているように見えます。

9-2. 電力需要・人口動態リスク

北海道地域の人口減少・産業構造変化は、長期的な電力需要にマイナス圧力をかけます。 住宅・商業施設向け需要は減少傾向であり、一方でデータセンターや再エネ関連産業など、新たな需要をどこまで取り込めるかが課題です。

長期投資家としては、「10〜20年スパンで需要がじりじり減る可能性」を前提に、採算確保や設備の合理化がどこまで進むかをウォッチする必要があります。

9-3. 規制・料金認可リスク

電力会社は自由化されたとはいえ、依然として規制産業であり、料金制度・託送料金・再エネ賦課金など、制度変更の影響を強く受けます。 政策変更により、採算が急に圧迫される可能性もゼロではありません。

特に、脱炭素政策の強化や再エネ比率引き上げに伴う追加投資・火力発電所の減損リスクなど、中長期の政策要因は注意が必要です。

10. 投資スタイル別評価:誰に向く電力株か

10-1. 向いている投資家

北海道電力が比較的向いているのは、以下のような投資家です。

  • 高配当ほどではないが「そこそこの配当+ディフェンシブ性」を求める中長期現物投資家。
  • 電力・インフラセクターをポートフォリオに少量組み入れて、全体のボラティリティを下げたい投資家。
  • 原発再稼働や燃料価格サイクルに伴う「中長期の再評価余地」に賭けたいバリュー投資家。

ただし、電力需要や規制の構造的リスクを理解し、「無リスク高配当株」ではなく「あくまでリスク付きディフェンシブ株」として扱えることが前提になります。

10-2. 向いていない投資家

逆に、以下のような投資家にはあまり適しません。

  • 高成長グロース株や2桁成長銘柄を主戦場とする投資家。
  • 年率4〜5%以上の高配当利回りを絶対条件とするインカム投資家。
  • 短期の値動きで利益を狙うデイトレ・スイング中心のトレーダー。

北海道電力は、「退屈だけど、暴落時には頼りになるかもしれない」タイプの銘柄であり、短期の派手な値幅を求めるには不向きです。

11. 買い時・売り時の考え方

11-1. 現在の水準の評価

PER3.8〜4.0倍・PBR0.5倍台・配当利回り約2.7〜3.0%という現在の水準を総合すると、筆者のスタンスは「長期ディフェンシブ枠としては検討余地あり(ただしフルポジは避ける)」です。

すでに業績回復をある程度織り込みつつも、将来の燃料価格・原発・金利といった不確実性がディスカウント要因になっており、「割安だけれど、理由もそれなりにある」状態と言えます。

11-2. エントリー戦略の一例

  • まずは少額(ポートフォリオの数%程度)を分散購入し、感触をつかむ。
  • 資源高・金利上昇・原発関連ネガティブニュースで株価が急落した際に、段階的に買い増しを検討。
  • PERが10倍近く・PBR1倍近くまで評価が戻った場合は、一部利益確定を視野に入れる。

特に、世界的なリスクオフ局面で株式市場全体が売られたとき、電力株も一緒に叩き売られることがあるため、「暴落時に淡々と拾う銘柄候補」として監視リストに入れておくのは有効です。

12. まとめ:北海道電力を長期ポートフォリオでどう扱うか

北海道電力(9509)は、PER4倍前後・PBR0.5倍台・配当利回り約3%という、数字だけ見ると非常に魅力的なディフェンシブ銘柄に映ります。 一方で、その裏には「利益の持続性への不安」「原発再稼働の不透明性」「燃料と金利の二重リスク」といった懸念も折り込まれています。

長期ポートフォリオに組み入れるのであれば、「高成長は期待せず、ディフェンシブ枠+バリュー枠の一角として、暴落時に買い下がりながら数%を配分する」くらいの距離感がバランス良いと考えられます。電力セクター全体を俯瞰しつつ、東電・関電・九電など他社と比較しながら、リスクを分散して組み込むのも一つの手です。

本記事は公開情報に基づく一般的な投資分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。実際の投資判断は、ご自身の投資目的・リスク許容度・投資経験に応じてご判断ください。





※ 本記事は特定銘柄の推奨や売買を勧誘するものではなく、情報提供のみを目的としています。記事内で取り上げた銘柄について、筆者または当社が保有している場合がありますが、利益相反防止の観点から、執筆内容は公正・中立性を保つよう配慮しております。投資判断は必ずご自身で行ってください。

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