
■ 上場廃止リスクに関する最新動向
2025年3月末をもって、東京証券取引所(東証)の「上場維持基準」に関する経過措置が終了しました。これにより、これまで一時的に緩和されていた上場維持基準が、すべての上場企業に対して本来の厳格な基準で適用されています。⇒ 経過措置の終了に伴う対応について
経過措置終了後の流れ
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2025年3月1日以降の基準日から、売上高や時価総額、株主数などの上場維持基準が本来の水準で判定されます
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基準未達の企業は、原則として1年間(売買高基準は6か月間)の「改善期間」に入ります
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改善期間内に基準を満たせなかった場合、「監理銘柄」「整理銘柄」に指定され、原則6か月間の指定期間を経て上場廃止となります
上場廃止リスクが高まる背景
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2022年4月の市場再編で、東証は「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場へと再編し、上場維持基準を大幅に引き上げました
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経過措置の終了により、特に「流通株式時価総額」や「売買代金」などの基準を満たせない企業が急増し、「上場廃止ラッシュ」が現実味を帯びています
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プライム市場だけでも50社、スタンダード市場では88社が基準未達とされており、他市場への移行や上場廃止が現実的な選択肢となっています
今後のスケジュール例(3月期決算企業の場合)
時期 | ステータス |
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2025年3月末 | 基準判定、未達の場合は改善期間入り |
2026年3月末 | 改善期間終了、未達の場合は監理・整理銘柄指定(約6か月) |
2026年9月末頃 | 上場廃止(基準未達の場合) |
※改善期間や監理・整理銘柄期間中に基準を満たした場合は、指定解除となります。
投資家・関係者への影響
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上場廃止となった場合、東証市場での株式売買ができなくなります
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企業側は、基準未達リスクの早期開示や、他市場への移行、経営改善策の実施が急務となっています
■ 投資家が今後取るべきリスク管理のポイント
東証の上場維持基準厳格化による上場廃止リスクの高まりを受け、投資家は以下のようなリスク管理策を意識することが重要です。
1. 分散投資を徹底する
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業種や市場、資産クラス(株式・債券・REIT・投資信託など)を分散することで、特定銘柄や市場の急変による資産全体への影響を抑えられます
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米国株や国内株だけでなく、債券や不動産投資信託なども組み合わせると、リスク分散効果が高まります
2. 投資額・ポートフォリオの見直し
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現在の資産の5~10%程度の投資額に抑える、または10年以上使う予定のない資金で投資するなど、無理のない範囲で投資することが大切です
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定期的にポートフォリオを見直し、市場環境や自身のライフステージの変化に合わせてリバランスを行いましょう
3. リスク許容度の明確化と戦略立案
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自分がどの程度の損失まで耐えられるか(リスク許容度)を明確にし、それに沿った投資戦略を立てることが基本です
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長期投資か短期投資か、ハイリスク・ハイリターンかローリスク・ローリターンかなど、自分の投資スタンスを明確にしましょう
4. 定期的な情報収集と状況把握
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市場の動向や上場基準の変更、保有銘柄のIR情報などを継続的にチェックし、リスクの兆候を早めに察知できるようにします
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特に上場廃止リスクが高まっている銘柄については、東証や企業の開示情報をこまめに確認しましょう
5. 感情に左右されない冷静な対応
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市場の急落時にもパニックにならず、事前に決めたルールに従って冷静に対処することが重要です
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含み損が出ても慌てて売却せず、損切りや保有継続の判断基準を事前に決めておきましょう
6. リスクマネジメントの4つの基本策
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リスクの回避(高リスク銘柄から撤退)
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リスクの低減(分散投資や情報収集で影響を最小化)
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リスクの移転(保険や信託、他者への委託など)
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リスクの容認(許容範囲内のリスクは受け入れる)
現在、東証で上場廃止に直面している(上場廃止が決定済み・整理銘柄指定中、または監理銘柄に指定されている)主な銘柄は以下の通りです。
※廃止理由は多くが「株式併合」や「完全子会社化」ですが、上場維持基準未達によるものも含まれる場合があります。
整理銘柄(上場廃止決定済み)
銘柄名 | コード | 市場 | 上場廃止予定日 | 主な理由 |
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エコナビスタ | 5585 | グロース | 2025/06/17 | 株式等売渡請求による取得 |
ジャパンワランティサポート | 7386 | グロース | 2025/06/16 | 株式の併合 |
カオナビ | 4435 | グロース | 2025/06/11 | 株式の併合 |
浜井産業 | 6131 | スタンダード | 2025/06/09 | 株式の併合 |
新光電気工業 | 6967 | プライム | 2025/06/06 | 株式の併合 |
東洋精糖 | 2107 | スタンダード | 2025/06/02 | 株式の併合 |
シーアールイー | 3458 | プライム | 2025/05/29 | 株式の併合 |
テックポイント・インク | 6697 | グロース(外国株) | 2025/05/29 | 完全子会社化 |
ジーエフシー | 7559 | スタンダード | 2025/05/28 | 株式の併合 |
シンニッタン | 6319 | スタンダード | 2025/05/26 | 株式等売渡請求による取得 |
※その他、多数の銘柄が2025年上半期に上場廃止予定 |
監理銘柄(上場廃止リスクが高い・確認中)
銘柄名 | コード | 市場 | 指定日 |
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ゴルフダイジェスト・オンライン | 3319 | プライム | 2025/05/15 |
メドピア | 6095 | プライム | 2025/05/14 |
三井住友建設 | 1821 | プライム | 2025/05/14 |
日本道路 | 1884 | プライム | 2025/05/14 |
トラスト | 3347 | スタンダード | 2025/05/14 |
インプレスホールディングス | 9479 | スタンダード | 2025/05/13 |
日新 | 9066 | プライム | 2025/05/12 |
IMAGICA GROUP | 6879 | プライム | 2025/05/09 |
NTTデータグループ | 9613 | プライム | 2025/05/08 |
三菱食品 | 7451 | スタンダード | 2025/05/08 |
鳥居薬品 | 4551 | プライム | 2025/05/07 |
※このほかにも複数の銘柄が監理銘柄に指定されています |
注意事項
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上記リストは2025年5月26日現在の情報であり、最新情報は東証の公式ページで随時ご確認ください。
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上場廃止理由は「経営統合」「株式併合」「親会社による完全子会社化」など多岐にわたります。必ずしも上場維持基準未達が理由とは限りません。
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監理銘柄は上場廃止が決定したわけではありませんが、リスクが高い状態です
より詳細な一覧や最新情報は、日本取引所グループ(JPX)の「上場廃止銘柄一覧」および「監理・整理銘柄一覧」ページをご参照ください