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【ポートフォリオ構築のための回想録】2015年1月15日スイスフランショックが金融市場全体に与えた影響について

2015年1月15日のスイス国立銀行(SNB)による「ユーロ/スイスフランの上限撤廃(フロア撤廃)」は、金融市場全体に衝撃を与える歴史的な出来事でした。この出来事は、通貨市場における極端なボラティリティのみならず、株式・債券・先物・不動産市場にも大きな影響を与えました。以下に各市場への実例を挙げて解説します。

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🔻【1. スイス株式市場】

✅ 実例: スイスのS&P Switzerland 20 Index(SMI)

  • 影響:
     SNBの発表後、SMI指数は約8.7%下落。為替の急騰(CHF高)によって、輸出企業が直撃されました。

  • 具体例:

    • ネスレ、ノバルティス、ロシュなどの大型企業はCHF高で国際競争力が低下し、株価が急落。

  • 解説:
     スイスは輸出依存が高いため、通貨高は企業収益に直接的な打撃を与えました。


🔻【2. ヨーロッパ全体の株式市場】

✅ 実例: STOXX Europe 600 Index

  • 影響:
     この混乱により、ヨーロッパの株式市場にも不安が波及。一時的にリスク回避で売られる局面があった。

  • 解説:
     SNBの予告なしの方針転換は「中央銀行の信頼性」に疑問を投げかけ、他の中央銀行の政策にも疑念が生まれました。


🔻【3. 為替先物・FX会社】

✅ 実例: Alpari UK、FXCMなど

  • 影響:
     FXブローカーが大量破綻・倒産

    • Alpari UK は破綻(破産申請)。

    • FXCM(米国) は巨額損失(2億2千万ドル以上)を被り、緊急融資を受ける。

  • 解説:
     多くの顧客は「1.20フロアで下支えされる」と信じていたため、フロア撤廃で大損害を受け、証拠金不足が続出。


🔻【4. 債券市場】

✅ 実例: スイス国債(Swiss Government Bonds)

  • 影響:
     スイスフランの安全資産としての需要が急増し、スイス国債の利回りが急低下(マイナス圏へ)

  • 解説:
     CHF高+リスクオフの組み合わせで、国債に資金が流入。10年債利回りが一時マイナス0.2%を下回るなど異常な状況に。


🔻【5. 不動産市場】

✅ 実例: スイス国内の不動産市場

  • 影響:
     為替高によるデフレ懸念+金利低下で、都市部の不動産価格は一部上昇も、地方は停滞または下落

  • 解説:
     投資資金が安全資産に向かう中で、一部は不動産にも向かったが、スイス企業の業績悪化により需要見通しが不透明に。


🔻【6. 金価格(国際先物)】

✅ 実例: 金先物(Gold Futures)

  • 影響:
     発表当日、金価格が急騰

    • 投資家がCHFと並ぶ安全資産として金に逃避

  • 解説:
     通貨政策の信頼性が揺らぐ局面では、金が再び「究極の避難所」として買われる傾向が強くなる。


🔻【7. リスク回避の連鎖】

  • 米ドルや日本円も一時的に急騰

  • グローバル市場全体でボラティリティが上昇し、VIX指数も一時的に急上昇しました。


🔚まとめ:SNBショックの多面的影響

市場 主な影響
スイス株式市場 為替高で大暴落(特に輸出企業)
欧州株式市場 信頼性不安により一時調整
FX・先物 複数ブローカー破綻・緊急支援
債券 安全資産買いで利回り低下
不動産 都市部は堅調、地方は不透明
商品(金) 安全資産として急騰

以下に、**2015年1月のスイスフラン・ショック(SNBショック)**が与えた影響について、特に「日本の不動産市場」と「米国株式市場」に焦点を当てて詳細に分析します。


🇯🇵【日本の不動産市場への影響】

🔹 直接的な影響:限定的(市場の構造的理由)

  • SNBショックの直接的な波及は限定的でした。

    • 日本の不動産市場は主に内需・金利・人口動向に影響されるため、欧州の為替ショックとは結びつきが薄い。

    • ただし、円高進行(CHF高に伴う「安全通貨買い」)が一時的に発生し、海外投資家の様子見姿勢が強まった。

🔹 間接的な影響

  1. 外国人投資家の日本不動産投資が一時スローダウン

    • CHFやEUR建てファンドなど、外貨建て投資家が「為替ヘッジリスクの見直し」を迫られ、慎重姿勢に。

    • 都心部(東京・大阪)でのクロスボーダー取引は一時的に停滞。

  2. 金融緩和継続の観測が強まり、不動産にとっては追い風

    • SNBの突然の政策転換により「中央銀行は予想外の手を打つ」という不安が広がり、日本では逆に「日銀はむしろ緩和継続が確実」との観測が強まる。

    • 結果、低金利継続→住宅ローン需要・REIT価格の安定に寄与。

  3. 実例: 東京オフィス・住宅市況

    • 2015年以降、インバウンド再開や五輪投資で上昇基調は継続。

    • SNBショックの影響よりもアベノミクス・金融政策・地政学リスクの方が支配的だった。


🇺🇸【米国株式市場への影響】

🔹 リスクオフの一時的波及

  • 2015年1月15日当日〜数日間、米国市場でもリスクオフの流れで調整が見られました。

  • VIX指数(恐怖指数)は上昇、一部の投資家は金や米国債に資金シフト。

🔹 影響は一時的で限定的

  • 米国経済のファンダメンタルは堅調であり、SNBショックは欧州中心の出来事と捉えられたため、影響は限定。

  • S&P500はその後すぐ回復基調へ

🔹 注目の市場動向:通貨とFRB政策への注目強まる

  • ドル高進行:CHFショックによりドルが「相対的に安全通貨」とされ買われた。

  • FRBの利上げ観測に影響

    • 2015年はFRBが利上げに踏み切る年(12月に実施)。

    • その前段階で、世界の金融不安は利上げ判断を複雑化させた。

🔹 セクター別の反応

  • **テックやディフェンシブ株(医療・生活必需品)**は強く、金融株は調整。

  • 金融株は金利・為替変動の不確実性により売られやすかった。


📊 まとめ:日本と米国の市場反応の比較

項目 日本の不動産 米国株式市場
直接影響 非常に限定的 一時的にリスクオフ
投資家心理 様子見・慎重姿勢 回復早く、安心感
為替影響 円高進行→輸出懸念 ドル高進行
政策観測 金融緩和継続へ安心感 利上げ観測に慎重論
長期的影響 東京圏不動産は上昇維持 S&P500は数週間で回復

🧭 このようなショックの投資戦略的教訓

  • 中央銀行の「予測不可能性」が最も大きな市場リスクとなる。

  • クロスボーダー投資(為替含む)には常にヘッジ戦略が必要。

  • 安全資産(CHF、JPY、Gold)への資金逃避の動きに注目することで次の流れを読むヒントが得られる。

 

 

 

補足:


為替相場(FX)

  • スイスフランの暴騰
    EUR/CHFは瞬間的に約30%急落し、1.20から0.85前後までフラッシュクラッシュを引き起こしました

  • 他通貨への波及
    スイスフラン/米ドル(USD/CHF)も大きく上昇。逆に、ユーロやポーランドズロチなど他国通貨も急落し、特にスイスフラン建ての外貨ローンを多く抱えるポーランドの金融消費者に深刻な打撃を与えました

  • ブローカーの破綻
    アルパリUKやEXCEL Marketsが破綻、FXCMも2.25億ドルの損失を被りました

株式相場

  • スイス株式市場の暴落
    スイスの主要株価指数(SMI)は発表直後に約10%下落、過去25年で最大の1日下落率を記録

  • 輸出企業・金融株の急落
    スウォッチなど輸出依存の企業は特に大きく下落し、UBSやジュリアス・ベアなど大手銀行も11〜13%下げました

  • 国際連鎖安
    リスクオフが広がり、他国の株価も短期的に下落。ダウ平均も一時約9%下落しました

債券相場

  • マイナス金利拡大・国債価格高騰
    SNBは政策金利を–0.75%に引き下げ。スイス10年国債は高騰し、利回りが史上初めてマイナス圏に突入

  • 超低金利による債券投資の困難化
    資金が安全資産へ流入する一方で、利回り低下が著しく、投資家や年金基金はリスク選好資産(不動産など)へ資金をシフトせざるをえなくなりました

先物相場

  • ボラティリティの極端な上昇
    EURCHF等の通貨先物にて約定不能や暴騰・暴落が連発し、価格乖離・無流動状態が発生

不動産相場

  • 住宅・投資用不動産の相対的な強さ
    経済成長の鈍化と移民減少圧力により賃貸需要は伸び悩む一方、金利低下で好立地の住宅・投資用物件市場には資金流入。優良物件価格は底堅い動きを示しました

  • 不動産投資への圧力
    債券の極端な低利回り化により、保守的な投資家もリスク回避の一環で魅力的な都市部住宅・投資用不動産への資金シフトを強めました

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